今回は、私が技術アドバイザーとして関わった現場での出来事をご紹介します。
「完成した家で気密が確保されていなかった」という、いま一度“施工品質”を問い直したい出来事です。

当時、私は勤めていた住宅会社を退職して間もない頃でした。以前にお世話になったことがある住宅会社の社長から連絡があり、「これから高断熱高気密住宅に取り組んでいきたい。技術の底上げに力を貸してもらえないか」というお話を頂きました。

ありがたいお声がけに、私も技術支援として関わらせて頂くことになりました。その会社はちょうど、高断熱高気密住宅の仕様づくりに取り組んでいるタイミングで、社内の営業拠点からも、「高断熱高気密仕様で家づくりをご計画中のお客様がいる」という報告があり、私も設計支援として関わることに。そして無事にご契約となりました。

私から工事課には、「断熱・気密の施工が始まったら連絡を下さい。現場で確認・検証させて頂きます」と、お願いしていました。

しかし、実際に連絡が来たのは「工事が完成しました」というタイミング。高断熱高気密住宅において、断熱・気密の施工精度は住宅性能を大きく左右する要素です。

完成してからでは、気密の不備があっても補修は難しく、構造内部に問題があっても見えません。

今回のお客様は、高断熱高気密住宅についてとても熱心に勉強されている方でした。
その姿勢に応えるべく、私はすぐに気密測定業者に依頼を行い、測定を実施することにしました。

測定当日は、お客様をはじめ、工事担当者・工事課長・店長、そして私の5人で立ち会いました。

気密測定は3回実施しましたが、いずれも屋内外の気圧差が生じず、測定が成立しないという結果に...。
次回はこの絶体絶命なピンチをどのように対処したのかについて記していきます。